インフルエンザのタンパク質「ノイラミニダーゼ」の分子模型展示

新薬の開発《創薬》への3Dプリンター活用法とは?!

      2016/07/22

皆様こんにちは、今回は、3Dプリンターが、お薬の開発に利用されてるというお話をしたいと思います。

新薬の開発(創薬)について。

新しい薬が私たちの手元に届くまで、実に20年近くかかるといわれてます。薬となる候補物質の探求である基礎研究、動物対象の非臨床試験、ヒト対象の治験、厚生労働省の承認、完成、発売という工程を経て、初めて使用できるようになるそうです。

薬は一製品あたりの製造原価が安く、製薬会社は、製造業の中でも利益率が非常に高くなっています。画期的な新薬を開発できれば、世界市場で年間数千億円を売り上げることも可能ですね。ところが、一つの新薬の開発には数十億円から数百億円という莫大な研究開発費が必要となるとのことです。

最初の基礎研究の段階で2~3年を要しますが、効率良く候補物質が見つかれば、それは研究開発費の削減に繋がりますね。

候補物質の探求について。

今回お話ししますのは、この最初の段階である候補物質の探求での3Dプリンターの活用になります。

さて、私たちの体は、約60~70%の水分と約15~20%のタンパク質で出来ており、タンパク質が集まって細胞を作り、細胞が集まり器官(臓器等)を作っています。それら細胞や器官は、外界や体内からの何らかの刺激を受け取り、情報として利用できるように変換する仕組みを持ってます。この構造を受容体(レセプター、リセテプター)といい、薬は、受容体に作用することで効果を発揮するとのことです。

また、動物から人へと感染するようなインフルエンザウイルスがあります。ウイルス表面を覆う2つの酵素が働いて生物に感染し自己複製しますが、抗ウイルス薬は、酵素の活性部位と呼ばれる部分に、その働きを阻害するように作用します。

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(3Dプリンターによる山形大学の川上先生ミライス株の共同制作)

この、もこもこした造形物ですが、インフルエンザウイルスを覆う2つの酵素の内の一つ「ノイラミニダーゼ」の分子構造模型です。真ん中に穴が開いてますが、ここに嵌る低分子があれば、インフルエンザは活動を妨げられます。それがインフルエンザワクチンであるタミフルです。

このような低分子を発見すれば、画期的な新薬を開発できて、世界市場で年間数千億円を売り上げることも可能なのですが、それがとても大変なことのようです。全ての発見されたタンパク質は、Protein Date Bank というデータベースに登録されており、誰でもデータを活用することが出来ます。日本では、Protein Date Bank Japanが運用されてます。新薬の開発のために、ここからのデータを基に候補物質を見つけるのですが、これが天文学的な組み合わせになるのは、私のような部外者でも想像できます。様々な解析方法が思考され、各社しのぎを削ってるそうです。

この中で、立体の模型を作成して、360度から分子構造を確認して、ある程度の当たりを付ける方法があります。データをパソコン画面上の3Dで見た場合に見逃してしまうような形状が、実際に模型を手にすることで見つかる可能性が高くなるそうです。従来は、手作業で作成していた分子構造模型も、3Dプリンターの登場により、低価格で短時間に分子構造模型が作成することが出来るようになりました。写真の分子構造模型もPDBからのデータをSTLに変換して、3Dプリンターで造形したものです。また、受容体や活性部位の場所は、複雑な穴となっており、ここにはめ込む低分子模型は、柔軟性のある素材が必要となりますが、低価格3Dプリンター用にも柔軟性のある素材は続々と販売されるようになり、そうした問題も解決されつつあります。詳しく知りたい方は、こちらをどうぞお読みになってください。3Dプリンターを用いたタンパク質分子模型の製作とその利用 川上勝山形大学工学部ライフ・3Dプリンタイノベーション創成センター

インフルエンザウイルスの解析への応用 

最後になりますが、東京大学医科学研究所ウイルス感染分野 河岡ラボ ”インフルエンザウイルスの病原性の分子基盤解明とその制圧のための研究”の展示において3Dプリンターで造形した模型が活用されてます。

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東大医科研の河岡先生の学士院賞受賞式にて、研究内容を天皇陛下へ御説明する「御進講」時の資料として、インフルエンザの「ノイラミニダーゼ」と薬剤「タミフル」の模型(右下)が用いられました。)

 

”新型インフルエンザウイルスによるパンデミックは、これが最後ではない。今後、新たな亜型のウイルス(H5N1など)によるパンデミック発生の可能性も危惧されている。そのため、インフルエンザウイルスがパンデミックを起こすのに重要なウイルスの変異を解析し、新型ウイルス発生の可能性予測に役立つ情報も集積している。”

こうした一刻も早い対応を求められる時、3Dプリンターが活用され、たくさんの人が救われるのは素晴らしいことですね。

3Dプリンターの、なお一層の発達を願うばかりです。

”3D プリンターの技術の 進展の早さも驚異的であり,筆者が開発した模型と同 じ,いやそれ以上の特徴をもった模型を誰もが簡単に 印刷できるプリンターが今後登場するであろう.これ は「単にプリント技術が向上した」,というだけにと どまらない.扱うメディアが 2D(疑似 3D)からリア ルな 3D になることで,我々が認識する構造の情報量 は圧倒的に増え,人の持つ本来の立体把握能力,洞察 力などをもっと発揮した研究が生まれる基礎的な環境 を整えることができることを意味する。”(3Dプリンターを用いたタンパク質分子模型の製作とその利用 川上勝)

では、みなさま夏風邪に気を付けましょう。

 

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